三洋化成のサステナブル経営の概要
当社グループは、創業以来、社是「企業を通じてよりよい社会を建設しよう」を拠り所として企業活動を行ってきました。その結果、私たちは社会や人々の生活をもっと快適に、もっと便利にする幅広い製品を、私たちが培ってきた化学の技術によって開発し、「よりよい社会の建設」に寄与してきたという自負を持っています。
しかし、昨今の環境意識の高まりを受けて、こうした製品による寄与だけではなく、私たちの企業活動がサプライチェーン全体にわたって環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に寄与するものでなければならないことをさらに意識しました。
また企業の持続可能性という観点でも、従来の当社グループの意思決定の仕組みや人事制度を、より透明性が高く、従業員エンゲージメントの向上にも資するものへと変えていく必要性があることも私たちは意識しています。
こうした背景の下、当社グループは2022年度に「サステナビリティ基本方針」を策定し、「ステークホルダーと連携しながら、経済的価値と社会的価値をともに向上させて、将来にわたって持続的な成長を目指す」という当社グループの新たな経営姿勢を明らかにしました。
サステナブル経営委員会とCSR推進管理委員会の位置付け・関係
現在当社には、取締役会直属の組織であり、社長を委員長とするサステナブル経営委員会と、経営会議直属の組織であり、レスポンシブル・ケア本部長を委員長とするCSR推進管理委員会があります。
サステナブル経営委員会では、当社グループ全体としての持続的成長のために、経済的価値、社会的価値を創出するプロセスについて検討しています。特に、環境・社会・ガバナンスに関しては、優先して対応すべき重要課題(マテリアリティ)について、その実現に向けた方針や全社施策を審議・決定し、関連部署の施策に展開するなどの責務を負っています。
一方でCSR推進管理委員会は、CSRガイドラインの実践(CSR活動)を実効性のある活動につなげることを目的としています。その中でも特に、マテリアリティに掲げるカーボンニュートラルの実現に関しては、二酸化炭素の排出量削減を最重要課題と位置付け、そのための具体的な取組内容を立案・実行する体制と仕組みの構築を行っています。またCSR推進管理委員会の活動状況は、年に1回、サステナブル経営委員会に報告しています。
自分自身が果たすべき役割と職責の重要性の認識
「グリーン・ウォッシュ」という言葉に象徴されるように、サステナビリティやCSRのような、企業活動にとって重く、簡単に成果を生み出すことが難しい課題においては、とかく「外部への見せ方」や「外部からの見え方」など、「形」を重要視するあまり、活動の実効性や実態が伴わないことが多いことに注意を払う必要があると考えています。
当社におけるサステナビリティやCSRの取り組みについても、決して「形」だけのものにならないよう、常に実効性や実態を伴っているかを判断基準とするモニタリングを行い、不十分であるなら軌道修正を求めることを意識し、進捗状況については適宜対外開示を行っていきたいと考えています。
人権方針策定とその後の取り組み
「サステナビリティ基本方針」に基づく経営を推進していく中で、さまざまな人権問題が世界的に注目されていることに関連して、当社グループが直接的な人権侵害を行わないことのみならず、間接的な関与も見過ごさないために、2023年3月に「人権方針」を策定し、開示しました。
「人権方針」では「6.人権リスクの特定」の項で3点の顕著な課題を特定しましたが、そのうちで、私たち自身が最も切実に感じている課題である「従業員の安全と健康」については、「健康経営」の推進や「ハラスメント撲滅」のための取り組みを具体的に進めています。その中で特に「ハラスメントの撲滅」については、グループディスカッションを含む勉強会を当社グループ全体で実施するという形で、2023年度を通じて極めて熱心な取り組みを展開しました。またハラスメントに関する内部通報や相談の窓口を社内・社外で拡充することなども行いました。このような勉強会の実施などによる役員・従業員への意識啓発と、通報・相談がしやすい環境を整備することで、すべての従業員がストレスなく、安心して働ける会社を早期に実現したいと考えています。
なお、「人権方針」の中の「6.人権リスクの特定」の項で特定した、その他2点の顕著な課題である「サプライチェーン上の労働」と「地政学的情勢や紛争の影響による人権リスク」への取組状況については、本サイトの「社会」のカテゴリーの中の「人権の尊重」の項に関連する事項を記載しておりますのでご覧ください。
≫ 人権の尊重
現在最も注力していること
当社グループがマテリアリティに掲げた6つの事項は、いずれも私たちが注力すべき重要な課題ですが、ここでは新たな成長軌道につながる新規事業の「仕込み」である次の2点を特に挙げたいと思います。
1点目は、QOL(生活の質)の向上に貢献する製品の開発です。具体的には、新たな治癒機構を有する創傷治癒・半月板修復材シルクエラスチンや匂いセンサーの円滑な事業化、細胞外小胞(エクソソーム)精製キットの早期事業化などが、まさしく経済的価値と社会的価値を共に向上させるものとして、現在最も注力していることです。特に、シルクエラスチンについては医師主導治験の結果として、極めて高い有効性が認められたことから、早期の事業化を進めていきたいと考えております。
また2点目は、カーボンニュートラル貢献製品の開発です。具体的には、ペプチド農業向け新製品の販売開始や当社材料を活用したCCU(二酸化炭素の回収・有効利用)の技術確立に取り組んでいます。
社会や人々の生活の快適さや便利さに寄与する従来型の化学製品の開発・製造・販売が、当面は当社グループの事業の基盤であることに変わりはありませんが、今後は、従来型の化学製品の事業に加えて、環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に寄与する新規事業の「仕込み」をしっかり行い、新たな成長軌道につなげることの必要性を強く感じています。
ステークホルダーコミュニケーションの推進
当社グループの「サステナビリティ基本方針」にも掲げたとおり、当社グループが将来にわたって持続的な成長を目指すうえでは、ステークホルダーとの連携は欠かせない要素となります。また当社グループがステークホルダーとの連携を図るうえでは、ステークホルダーに当社のサステナブル経営の全体像を理解いただく必要があります。ここで言う「全体像の理解」とは、単に実行している内容への理解だけでなく、その背景にある考え方や基本方針にさかのぼって理解いただくことを指しており、そのような目的が達成されるコミュニケーションが重要であると考えています。
当社のコーポレートサイトの中に置かれたこのサステナビリティサイトも、基本的には上記の考え方に基づき毎年更新しています。私たちのこうした考え方が、少しでもステークホルダーのみなさまに伝わることを願って止みません。
今後実現していきたいこと
2023年度に当社グループは、コモディティ化により収益が低迷していた高吸水性樹脂事業からの撤退を決定しました。同様に、低収益事業であった中国での界面活性剤などの生産事業からの撤退も決定しました。これらの撤退により、当社グループにとっての長年の懸案事項の1つが解消され、構造改革は大きく前進したと自己評価しており、これにより収益力を向上させる環境整備が一歩進んだと考えております。
この構造改革により当社グループの売上規模は小さくなるものの、今後はこれらの低収益事業にかけていた経営資源を、より高収益の製品群や、上記の「現在最も注力していること」で述べた新たな成長軌道につながる新規事業を構成する新製品の開発・製造・販売にシフトします。
こうしたポートフォリオの転換により、当社グループは小規模であっても、ユニークな機能を有する唯一無二のパフォーマンス・ケミカルスのメーカーとして、高収益企業を目指します。そしてこれこそが、私たち自身が持続的に輝ける会社になるための道であると考えています。
ご理解・ご協力のお願い
当社グループは、これまでもこれからも、私たちが培ってきた他社にない独自の技術により生み出す幅広い製品を通じて、持続可能な社会の実現に寄与し、ひいてはそのことが当社グループ自身の持続可能性につながることを、ステークホルダーのみなさまにはぜひお伝えし、ご理解をいただきたいと考えております。
このサステナビリティサイトを隅々までご覧いただき、当社グループに対するご理解を深めていただければ、それに勝る喜びはありません。
今後とも当社グループに対するご理解とご支援を、何卒よろしくお願い申し上げます。
取締役 兼 常務執行役員
サステナビリティ担当 兼 経営戦略部門担当